胎盤で亢進したアデノシンシグナル伝達経路が妊娠高血圧腎症(Preeclampsia: PE)の発症に寄与するという最近の成果(Circulation.2015.131.730-)に基づき、より詳細な分子メカニズムの解明を目指してる。妊娠ラットを用い、子宮・胎盤への血流を抑制することによるPEモデル、Reduced Uterine perfusion pressure model (RUPP model)を施行し、PEの表現型を安定して再現できるレベルまでモデルの確立を目指している。今後は、RUPPモデルでの胎盤におけるアデノシンの発現レベルの解析およびアデノシンシグナルに関与する分子群の発現解析を行う予定である。さらにはアデノシンシグナル経路を標的とした阻害剤や酵素剤を用いて、PEの治療的な可能性について検討を行う予定である。また、ヒト絨毛細胞組織片培養(Human Villous explant culture: HVE)やヒト絨毛細胞不死化細胞株HTR-8/SV neo細胞を用い、低酸素などのPE発症に関与する刺激によるアデノシンシグナル伝達経路の活性化について検討を行っている。PE動物モデルおよび細胞実験系の両面からアデノシンシグナル伝達経路のPE病態への関与を検討し、治療的な可能性を探求したい。
|