野生型Lewisラットの膝関節滑膜より得られた滑膜幹細胞を、ラットのアキレス腱と共培養した。増殖させた滑膜幹細胞1x10e6個をリン酸緩衝液に浮遊させ、アキレス腱と2時間インキュベーターで培養した後、培養液を加えて1週間培養した。細胞はDiIで標識した滑膜幹細胞あるいはGFP遺伝子改変ラット由来の滑膜幹細胞を用いた。1週間の培養後、肉眼的にDiIあるいはGFPの発光を腱全体に確認でき、滑膜幹細胞が腱に生着していることが分かった。また組織学的にもDiIあるいはGFPで発光する細胞を腱に確認できた。 腱の内部に細胞を誘導するためには、腱にスリットを入れることが有効と考えられ、腱の伸長刺激に対する破断強度を低下させないためには、腱の線維方向にスリットを入れることが良いと考えられた。バイオメカニクスの検討を行ったところ、縦にスリットを入れることで引張り刺激に対する破断強度の低下は認めなかった。このスリットを入れた腱と滑膜幹細胞を共培養すると、スリットを入れた空間に細胞が侵入し、生着していることが組織学的に分かった。これらの腱に生着した細胞の特性が変化したかどうかを調べるために、GFP+滑膜幹細胞と1週間培養し、この組織をコラゲナーゼ処理した後GFP陽性細胞のみソーティングして表面抗原を解析したところ、培養前後で特性は変化していなかった。 今後は、培養液中に軟骨分化を促すサイトカインなどを含ませることで、腱に生着した細胞が軟骨分化し特性に変化が生じるかどうか、腱に張力を加えて培養することで変化が生じるかどうかの検討を行い、軟骨分化に最適な条件を見つけたのち、半月板欠損部への移植実験に移る。半月板欠損の作成により、半月板が再生することはなく、軟骨が変性を起こすこと、腱移植のみをおこなった場合、半月板欠損部が再生半月板で置換されるが、組織学的に軟骨細胞が誘導されていないことを確認している。
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