研究課題/領域番号 |
15H06239
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
実験動物学
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
泰松 清人 山梨大学, 総合研究部, 特任助教 (10755482)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2016年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2016年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2015年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | CRISPR/Cas9 / ゲノム編集 / Precise knock-in / 変異体作成 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、改良を加えたゲノム編集技術CRISPR/Cas9システムを用い内在性遺伝子の破壊および外来遺伝子への置換を、簡便に効率良く遂行できる新しい動物実験解析技術を開発することである。 研究代表者は当該年度において、CRISPR (clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas9 (CRISPR associated protein 9 nuclease) システムにより標的ゲノム配列にDNA二本鎖切断を誘導し、修復過程の高頻度なエラーにより標的ゲノム配列に変異を導入する従来のノックアウト法を改良し、簡便かつ高効率な新しいノックアウト法をゼブラフィッシュを用いて構築した。新手法は、crRNA(CRISPR RNA)、tracrRNA(trans activating crRNA)と精製したCas9タンパク質を用いることで簡便化と高効率化を達成しており、広範な生物種において利用可能であるため、ゲノム編集技術を一層発展させ利用拡大に貢献するものである。 また、研究代表者は新手法のノックイン技術への応用により未解析遺伝子epdr1座位へのレポーター遺伝子のノックインを行い、遺伝子破壊の表現型の観察と標的遺伝子発現細胞の動態解析が可能な系統を樹立し、未解析遺伝子epdr1の働きの一端を明らかにした。本ノックイン手法はこのように、遺伝子破壊の表現型解析と発現動態解析を同時に行うことができ、未解析遺伝子の機能解析に有用であることから、今後遺伝子機能の解析に盛んに用いられるようになると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は当該年度において、CRISPR/Cas9 システムにより標的ゲノム配列にDNA二本鎖切断を誘導し、修復過程の高頻度なエラーにより標的ゲノム配列に変異を導入する従来のノックアウト法を改良し、簡便かつ高効率な新しいノックアウト法を構築した。従来の手法はguideRNA (gRNA) とCas9RNAを用いていたが、クローニングとRNA合成の必要があったが、新手法は、crRNAとtracrRNAを化学合成し、精製したCas9タンパク質と共に用いることで準備を簡便化している。また、生体内に取り込まれたCas9タンパク質はCas9RNAの場合とは異なり翻訳なしに即効で働くために、ゲノム編集の高効率化が達成された。 また、申請者は新手法のノックイン技術への応用により未解析遺伝子epdr1座位へのレポーター遺伝子のノックインを行い、標的遺伝子発現細胞の動態解析と遺伝子破壊の表現型の観察が可能な系統を樹立した。先のCRISPR/Cas9の新手法をレポーター遺伝子のノックインに応用し、標的座位の開始コドン前後にレポーター遺伝子が挿入された系統を樹立した。レポーター遺伝子の挿入座位がヘテロ接合であれば、標的遺伝子のプロモーター活性をレポーター遺伝子が受け取ることで標的遺伝子陽性細胞を可視化できる。また、レポーター遺伝子の標的座位がホモ接合であれば正常な標的遺伝子の発現が失われるために遺伝子破壊の表現型を観察することが可能である。申請者は樹立したノックイン系統を共焦点レーザー顕微鏡を用いて詳細に観察し、epdr1陽性細胞の発現動態解析を行った。 これらの技術開発と、標的座位へのレポーター遺伝子ノックイン系統の樹立は、PLOS oneに当該年度にequally first authorとして発表した (Kotani and Taimatsu et al., PlOS one, 2015)。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は、おおむね研究計画の通りに研究を遂行したが、epdr1以外の研究計画書に記した未解析遺伝子のノックイン系統を作成することは出来なかった。現在epdr1の遺伝子破壊の表現型を観察中しており、神経細胞の分布に関して異常が認められた。そのために、ノックイン系統を用いた発現動態と遺伝子破壊の表現型の観察が、未解析遺伝子の働きの解明における強力なツールとなることを確信した。 今後は、他の未解析遺伝子のノックイン系統の作成を進めるとともに、作成したノックイン系統の解析を進め、発現動態と遺伝子破壊の表現型の解析を通して未解析遺伝子の働きを明らかにしていきたい。ただし、予想よりもノックイン系統が得られ難いため、ノックインのさらなる効率化が必要であるため、CRISPR/Cas9法を応用したノックイン法の改良も同時に推進していきたいと考えている。
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