研究実績の概要 |
がんの抗PD-1抗体治療の開発により、臨床試験での奏功率は約30%と劇的に向上したが、約70%の患者には依然大きな治療効果は見られない。なぜ抗PD-1抗体治療に不応答な患者がいるのか、その原因を解明するためには、なぜ抗PD-1抗体治療で癌が治るのか、を解明する必要がある。抗PD-1抗体による腫瘍増殖抑制には、CD8+ T細胞を中心とした細胞性免疫が重要性な役割を果たすことが近年明らかとなってきた。しかし、体液性免疫の役割はほとんどわかっていない。抗PD-1抗体治療における体液性免疫の役割を解明するため、本年度は動物モデルの最適化を行った。様々ながん(LLC, CT26, B16, MC38, EG7, Renca, WEHI3, MethA, Pan02)を遺伝的背景の異なるマウス(C57BL/6もしくはBALB/c)に接種し、 抗PD-1抗体の治療効果を比較した。その結果、C57BL/6マウスでは大腸癌MC38に対して、BALB/cではMethAに対して抗腫瘍効果が高かったので、これらの腫瘍を今後の実験に用いることを決定した。次に、CD8+ T細胞以外の免疫細胞の抗腫瘍効果における関与を検討するため、MC38を接種し、CD8+ T細胞を生体内から除去したのちに抗PD-1抗体治療を行った。その結果、抗腫瘍効果は減弱したが、CD8+ T細胞を除去しした無処置マウスの腫瘍増殖とCD8+ T細胞を除去しした抗PD-1抗体処置マウス比較すると、顕著な増殖抑制効果が見られた。このことは、体液性免疫等のCD8+ T細胞以外の細胞も腫瘍増殖抑制効果に貢献していることを示しており、B細胞・抗体を中心とした体液性免疫の関与を示唆している。
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