研究実績の概要 |
本研究は,近年注目を集めている“液性因子(マイオカイン)を介した骨格筋と他臓器の連関”に関するもので,特に骨格筋から分泌され腎臓に保護的に作用する新規液性因子の同定とその臨床応用を目指したものである. 昨年度~本年度にかけてこの新規マイオカインのスクリーニングを進め,網羅的解析およびその後のリアルタイムPCR・ウエスタンブロットの結果,いくつかの因子の発現が肥大した骨格筋細胞において上昇していることが明らかとなった.さらに,これらの因子について文献的な検索を進め,腎臓保護的な作用を有することが既に報告されている因子をいくつかピックアップした.そのうち1つの分子については,骨格筋特異的ノックアウトマウスのマウスライン確立までが本年度に終了している.今後は,同ノックアウトマウスを用いて骨格筋細胞における候補因子の役割をさらに検討していく予定である. 本研究は基礎研究の結果を臨床研究に結び付けるトランスレーショナルリサーチであり,臨床応用の前段階として本年度はデータベースの作成を主に行った.具体的には,当施設へ入院された患者を対象とし各種パラメータや筋力などの運動能力を含む身体計測の結果を網羅したデータベースを構築することが出来た.本データベースを用い,簡便に計測可能なパラメータ(年齢・性別・握力・下腿周囲径)から算出した“サルコペニアスコア”が心不全患者において将来的な心血管疾患イベント発症の予測因子となることを明らかにし,学会発表および国際誌への報告を行った(Onoue, et al. Int J Cardiol. 2016).本年度は,本研究の目的である慢性腎臓病(CKD)患者を対象として同様の検討を行うとともに,前述の基礎研究で同定した候補因子の血中濃度測定を確立したデータベースとリンクさせ,運動耐容能との関連の評価から行っていく予定である.
|