研究実績の概要 |
多発性硬化症(MS)においては、通常のMRIでは異常所見を認めないnormal-appearing brain tissue(NABT)の障害がMS患者の運動障害や高次機能障害に影響する可能性が高いと考えられている。MRIによる得られる拡散テンソル(DTI)および、新しい手法であるdiffusional kurtosis imaging(DKI), q-space imaging(QSI), neurite orientation dispersion and density imaging(NODDI)は、in vivoで特定の白質路を可視化し、それらの微細構造を定量的に解析できる手法であり、病態の解明や臨床的評価にも有望な評価手段となり得る。該当年度に得られた実績を大まかに記すと以下の2点である。 1. 生体拡散モデルの一つである Two-compartment model を参考にした独自の指標 (Fraction of high b-pair: FH)を考案し, 従来のみかけの拡散係数(ADC)と比較した意義を検討した.多発性硬化症患者のNABTを検出する試みで, Two-compartment model に拡散テンソルの要素を加えることで, 神経軸索に垂直な方向の「遅い拡散」を選択的に評価した. この方法により多発性硬化症患者に慢性的に存在するわずかな炎症により, 細胞膜の性状が変化して水透過性が増加していることが示唆された.本研究はEuropean Radiologyに掲載されている。 2.MS患者ならびにNMO患者の視覚障害の解明やその認知機能との関係を解明するべく、DKIを用いて評価し、さらに臨床指標である視覚誘発電位(VEP)との対比を行い、その有用性を検討した。本研究は論文誌Magnetic resonance imagingに投稿されin pressの状態である。
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