研究実績の概要 |
・昭和基地周辺の露岩域から約500株の菌類を分離することに成功した。系統解析に広く用いられているITS領域(Internal transcribed spacers) と26S rRNAのD1/D2領域の塩基配列を基に、これらの菌類を子のう菌類4種、担子菌類11種の計15種に分類した。 ・種名を決定した菌株について、至適生育温度を調べた結果、子のう菌類は4種全てが20℃が至適生育温度であったのに対し、担子菌類ではGlaciozyma属菌が10℃、Mrakia属菌が15℃、Cryptococcus属菌で20℃と属によって、至適生育温度に差があった。 ・菌類が極地で生存するには、低温でも活性のある菌体外酵素の分泌が必要不可欠である。そこで、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼについて、各菌の指摘分泌温度を調べてみた。 リパーゼはCryptococcus victoriae以外の全ての菌類で分泌が確認でき、至適分泌温度は10~15℃であった。このうち、乳脂肪を分解する能力を持っていたのはMrakia属菌のみであった。アミラーゼはGlaciozyma watsonii, Mrakia gelida, Mrakia robertii, Mrakia blollopis のみで分泌が確認でき、至適分泌温度は全て15℃であった。セルラーゼは子のう菌類ではPseudogymnoascus pannorumのみで分泌が確認でき、至適分泌温度は10℃であった。また、担子菌類ではMrakia属菌のみで分泌が確認され、至適分泌温度は全て4℃であった。
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