研究課題
特別研究員奨励費
社会相互作用の基盤となるメカニズムを明らかにすることを目標として、研究を進めてきた。昨年度までは乳幼児の表情模倣反応(無意識のうちに他者と同一の表情を表出する現象)に着目し、発達初期過程において、他者の表情や意図を理解する機能の獲得には、表情模倣を介した、他者の状態を自身の身体で体現するシステムが関与していることを明らかにした。一方で、上記のシステムには、表情模倣の結果として自己の身体に生じた変化を分析し、それを意味づける機能も必要であると考えられる。それを調べるにあたり、内受容感覚と呼ばれる、心拍や内臓等の身体の生理状態を知覚する感覚機能に着目した。そこで本年度は、内受容感覚に関する研究の第一人者である英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校のManos Tsakiris教授と共同で、内受容感覚が表情認知に果たす役割についての研究を実施した。まず、内受容感覚の鋭敏性の個人差に着目し、それが表情認知の正確性や覚醒度の知覚にどのように影響するのかを調べた。他の研究プロジェクトと共同で約150名の被験者(成人)を対象に実験を実施し、各個人の内受容感覚への鋭敏性の特性を得た。その後、得られたプールから内受容感覚が特に鋭敏な被験者と、特に鈍感な被験者を選択し、微弱で曖昧な表情に対する表情認知課題を実施した。その結果、内受容感覚が鋭敏な被験者群は、鈍感な被験者群に比べて、微弱な表情をより正確に判断し、それらに対して強い覚醒度を知覚することがわかった。この結果から、他者の表情、特に微弱な表情の認知には自身の身体の生理状態を知覚・分析するプロセスが関与することが示された。今度は、他者の表情を認知する過程において、誘起された身体変化と、それを知覚する能力が、それぞれどのように作用しているのかを具体的に調べていく予定である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Royal Society B
巻: 283 号: 1844 ページ: 1844-1844
10.1098/rspb.2016.1948