パリへの海外出張では、ポンピドゥーセンターの素描版画室において、画商レオンス・ローザンベールが所蔵していた『黄金の書』を調査した。これは画商が自らのギャラリーで作品を扱っていたキュビスム、シュルレアリスムの画家・彫刻家たちの素描や文章を集めた様々な小作品のアンソロジーともいうべきものである。多くの紙片にはイメージだけでなくテクストが芸術家自身によって書き加えられており、テクストとイメージという観点から非常に興味深い研究対象である事が判明した。ニューヨーク海外出張では、ニューヨーク近代美術館を中心に調査した。調査の対象としたのは、イギリスおよびフランスのシュルレアリスムの挿絵本およびキュビスム関連の雑誌である。これらの調査と平行して、本出張においてはニューヨーク私立大学の名誉教授メアリー・アンヌ・コーズ氏、メトロポリタン美術館の出版室長であり、アンドレ・ブルトンの英訳者でもあるマーク・ポリツェッティ氏、メトロポリタン美術館学芸員レベッカ・ラビノウ氏、および彼女が指揮をしているレオナルド・ローダー・コレクションの研究員との面談を通して、今後調査すべきアーカイヴに関する情報を得た。また、これらの面談の成果は、情報交換を行ったという点だけではなく、今後の共同研究の可能性や、近しい研究を遂行している専門家を紹介してもらう事で今後のより広い人脈形成の可能性を開くことができた点にある。エジンバラ海外出張では、スコットランド国立近代美術館のローランド・ペンローズ・コレクションを調査した。本出張では、彼の所蔵していた挿絵本のコレクションや、彼が新聞記事や挿絵を切り抜いて貼付けたコラージュ作品のスクラップブック、イギリスにおけるシュルレアリスム展のパンフレットなどを調査した。
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