28年度はスペインで開催された国際学会でこれまでの研究成果を報告することができた。また、研究成果の一部は、東北大学で開催された小川芳樹教授主催の研究会およびオーストラリア、Monash Universityでの招聘講演で公表することができた。さらに、2年の研究成果のまとめとして国際研究雑誌に論文を2稿投稿した。 28年度の主な研究活動は当初の研究計画に従う形で、(1)コーパスを用いた言語変異の使用実態の調査、(2) 言語変異と情報構造の関係に関する実験、の2点を行った。具体的には、(1)主語につく「が」「の」の交替について、大正・昭和初期の話し言葉コーパスから得られたデータを用いて、ロジスティック混合効果モデルといった統計解析により言語変化の定量的な可視化を行うことができた。その結果、英語などで提唱されていた言語変化モデルに日本語のデータも従うことが観察でき、普遍的な言語の特性の解明に貢献することができた。その成果は国際研究雑誌に投稿済みである。 (2)言語変異「が」「を」と情報構造の関係に関しては、これまでの実験に加えて音声知覚実験を行い、その結果とこれまでの成果をまとめて国際研究雑誌に投稿した。 さらに、前年度からスタートした国立障害者リハビリテーションセンター研究所、高次脳機能障害研究室との共同研究では、当研究課題で扱う言語現象に関する実験を今年度に入って本格的に開始した。そこでは、主にfMRIを用いた言語理解に関する脳機能の観点から言語構造を解明することを試みている。これらの成果は、今後、言語学の分野にとどまらず脳科学分野においても共有されるよう、国際雑誌での論文として掲載することを主眼として現在も継続してデータ収集を行っている。
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