研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、血管炎症候群患者の血管内皮細胞の機能異常を証明することを目標に研究を進めた。血管炎症候群患者の血管内皮細胞を直接得ることが難しいことから、iPS細胞を用いた研究を行った。大動脈炎症候群患者末梢血単核球からセンダイウイルスベクターを用いて、大動脈炎症候群患者由来のiPS細胞を誘導した。多分化能の評価として、免疫染色・mRNA発現解析・核型検査・NOD-SCIDマウスを用いた奇形腫形成能を確認し、iPS細胞の樹立に成功した。次に作製したiPS細胞から血管内皮細胞の分化誘導を行った。分化誘導プロトコールは既報告のフィーダーフリー分化誘導を中心に行ったが、大動脈炎症候群患者由来のiPS細胞から血管内皮細胞を効率よく分化誘導できなかった。そこで既報告の論文を参考にし、古典的なOP-9を用いた分化誘導法や、胚様体を用いた誘導方法を応用しながら血管内皮細胞の誘導を試みたが、分化誘導効率の改善は得られなかった。最終的には血管内皮分化誘導プロトコールを一から見直し、独自の血管内皮細胞の分化誘導法を樹立した。Wntシグナルを活性化するサイトカイン・低分子化合物を用いることで、高効率で中胚葉細胞を誘導することに成功した。また、Lateral plate mesodermが血管内皮前駆細胞の形成に重要であることから、必要な誘導因子を添加することにより、高効率に血管内皮前駆細胞を誘導することに成功した。この誘導前駆細胞はVEGFを大量に添加した培地で培養すると血管内皮細胞に分化した。この方法により、大動脈炎症候群患者由来のiPS細胞から血管内皮細胞を高効率で誘導することができた。最後に、健常人あるいは大動脈炎症候群患者のiPS細胞から誘導された血管内皮細胞の機能比較解析を行ったが、研究期間内に特定の機能異常を同定するには至らなかった。今後更なる検討による展望が期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA
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10.1073/pnas.1604178113
Autoimmunity Reviews
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