研究課題
特別研究員奨励費
ヒト角膜内皮細胞(HCEC)はポンプ機能とバリア機能によって角膜の透明性を保持している。HCECは胎生期の神経堤幹細胞(NCSC)に由来し、損傷を受けると不可逆的に減少してしまい、失明にも至る水疱性角膜症という病態に陥る。水疱性角膜症に対して従来献眼による角膜移植が行われてきたが、ドナー不足と術後の拒絶反応が大きな問題となっている。本研究の目的は患者自身の末梢血単核球から樹立したiPS細胞をHCECに分化誘導し、移植可能な細胞シートを作製して移植に供するという画期的な角膜再生治療法を開発することである。本研究ではまず末梢血単核球からのiPS細胞の樹立および多能性確認、iPS細胞からHCECの前駆細胞であるNCSCへの分化誘導および確認、誘導されたNCSCの純化、NCSCからHCEC様細胞への誘導を成功させた。また、ATRA、Asc-2P、TGF- β2、bFGF、SB431542、Y27632等HCECの分化・増殖に関わるサイトカインや化合物を添加した培地でHCECの前駆細胞であるNCSCを培養することにより、NCSCからHCEC様細胞への分化誘導条件を成功させた。さらに誘導されたHCEC様細胞の角膜内皮マーカーの発現をrealtime PCRで確認したところ、一部の細胞においてCol8A2、Col4A2、SLC4A4、CDH2の遺伝子発現を認めた。また抗ZO-1抗体、抗Na+/K+ ATPase抗体、抗SLC4A4抗体、抗Col8A2抗体を用いる免疫染色を行ったところ、一部の細胞において陽性発現を認めた。誘導されたHCEC様細胞の懸濁液を用いて誘導HCEC様細胞シートを作製し、コラーゲンシート、培養角膜内皮シートとNa/K ATPaseポンプ機能を比較した。誘導HCEC様細胞シートはコラーゲンシートより高いポンプ機能が認められたが、培養角膜内皮シートより有意に低かった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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British Journal of Ophthalmology
巻: Jan 5 号: 9 ページ: 1244-1249
10.1136/bjophthalmol-2016-309775