研究課題
特別研究員奨励費
光子光子散乱実験を発展させるアプローチとして、固体結晶中の強電場を構成する仮想光子とX線を用いた新粒子探索実験に関し研究を行った。結晶中電場の仮想光子とX線を衝突させると、素粒子標準理論を超える物理から予言される未知粒子の一つであるアクシオン様粒子(ALP)が存在する場合、X線がALPに変換される可能性がある。本研究では結晶による変換を、ALP質量を考慮・X線動力学的回折理論を用いて初めて厳密に計算し、X線放射光施設にてALP探索実験を行った。実験セットアップは以下の様になる。シリコン単結晶から二枚の薄い刃を削り出したチャンネルカット結晶に、X線ビームを照射する。刃内で変換されたALPを遮光壁に通し、変換されなかったX線を除いた後二枚目の刃でX線に逆変換し検出器で測定する。壁越しに光子が伝播する事象を探索する手法は、ALPの地上探索実験に用いられてきたが、この実験手法は光子・ALPの変換に先行実験の様な磁場でなく電場を用いている点が新しい。また、探索するALP質量は入射X線の結晶に対する入射角に依存し、磁場を用いた場合と異なり結晶を回転させるだけで簡単に掃引することが可能である。探索質量は入射角を大きく取ることで最大1keVまで大きくすることができ、先行実験では効率的に探索されてこなかった重たいALPを探索できる。この実験手法を用いて、SPring-8 BL19LXUビームラインにて2017年10月にビームタイムを取得し実験を行った。この実験では有意な信号を得ることは残念ながらできなかったが、得られた結果から、重たいALPに対して地上実験としては最も厳しい制限を課すことができた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Physical Review D
巻: 96 号: 11
10.1103/physrevd.96.115001
Physics Letters B
巻: 763 ページ: 454-457
10.1016/j.physletb.2016.11.003