研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、ジュール・シュペルヴィエルの作品を対象に、自伝的な喪失の体験及び、不在と伝達の弁証法を伴う詩的行為そのものとの関連でシュペルヴィエルに固有の詩的言語を考察することを目的として実施された。今年度の研究実施計画は以下の通りであった。第一に、シュペルヴィエルの文学における「透明な難解さ」という概念が、他の作家との交流、とりわけ書簡を通した交流によっていかに形成されていったのかを分析し、ラルボー、ポーラン、エティアンブルがシュペルヴィエルの文学理論構築の中でそれぞれ別の役割を担っていることを明らかにすること。第二に、初期、中期作品における文学概念と形式の相克を、象徴主義、ロマン主義、モデルニスム、シュルレアリスムとの位置関係の中に描き出すこと。第三に、詩句の構造およびテクスト生成過程における詩句の音韻論的修正を考察し、詩句の中でいかに「透明な難解さ」の概念が実践されるかを検討すること。研究の実施状況は概ね計画に沿ったものであった。昨年度の学会発表をもとに、『縫合の詩学―ジュール・シュペルヴィエルのピレネー巡礼―』(原題はフランス語)と題する論文を投稿した。この論文では、散文作品である『泉に飲む』の読解を中心にシュペルヴィエルの詩学におけるピレネーの土地の持つ意味を確認し、詩篇『オロロン・サント・マリー』の音韻論的分析へとつなげる形で、共感が死者へと向けられる過程を分析した。また、この論文を展開させる形で、両親の不在がシュペルヴィエルの詩学の方向性を定めていることを、博士論文の第一部にまとめた。今後は、音韻、リズム、イメージの観点から韻文作品の語彙の通時的分析を行い、博士論文にまとめたいと考えている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Les ecrivains en Aquitaine, Actes du congres de Perigueux, 10 et 11 septembre 2016, Bulletin de la Societe Historique et Archeologique du Perigord
巻: Tome CXLIV ページ: 479-487
東京大学大学院総合文化研究科フランス語系学生論文集『Resonances』
巻: 第9号 ページ: 42-49
120005851276