本研究では、Talbot-Lau干渉計を用いた、医療診断用の高感度X線撮影システムの構築を目指す。Talbot-Lau干渉計は回折格子を使用したX線撮影法の一つであり、物質中のX線の位相変化・小角散乱を検出して高感度な撮影が可能であるため、実用化が期待されている。我々は埋め込みX線ターゲットという独自のX線源を開発しており、Talbot-Lau干渉計と組み合わせた新規のX線撮影システムの開発を行っている。本年度はドット形状の埋め込みX線ターゲットを用いた2次元 Talbot-Lau干渉計の検証を行った。通常Talbot-Lau干渉計はライン状の1次元回折格子を使用するが、回折格子の方向によってコントラストに差が生じる。回折格子を2次元化することで、方向に依らずに位相・小角散乱コントラストが得られ、より高精度な測定が可能になる。通常2次元Talbot-Lau干渉計は格子作製が難しいことから検証例は数少ないが、埋め込みターゲットの特徴(微細構造の作製が容易)を利用すれば、その問題を解決でき、容易に2次元干渉計を構築できる。 埋め込みターゲットは学内の施設を用いて作製し、それを用いて2次元Talbot-Lau干渉計を構築した。全長1 mというコンパクトな光学系において、X線の位相変化・小角散乱によるコントラスト(位相微分像、小角散乱像)を取得することができた。位相微分像や小角散乱像は方向によって異なるコントラストを示した。この結果から、2方位で調べることでこれまで見落とされていたコントラストを取得できることがわかり、2次元Talbot-Lau干渉計が有効であることが示された。 以上の成果は、また報告者を筆頭著者として英文論文誌(Optics Express)に提出され、2015年6月に受理された。また2015年9月に参加した国際会議XNPIGでは、口頭発表にて今回の研究成果を報告し、非常に高い評価を受けた。
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