研究課題
特別研究員奨励費
本研究は二次壁(非構造壁)を有する柱梁架構の高精度な性能評価モデルを構築することを目的している。本研究の3年目の目的は建物の機能維持限界性能を定量的に評価することである。当初の研究計画では力学的な損傷評価モデルについて,居住者の感覚との相関を分析し,人間科学に基づくアプローチを計画した。特に,人間心理(不安感,危機感等)を定量化し得る指標と建物の住機能維持限界の相関を検出することを立案した。しかし,地震被害による建物の損傷に対する人間心理を工学的に定量化するのは時期尚早と判断した。一方,居住者の快適な住環境には温熱環境,空気環境,光・視環境,音環境の関係が深い。非構造壁が地震により損傷すると,ひび割れや欠損部を通じて空気の移動が可能になるため,特に温熱環境,空気環境,音環境に影響し得ると考えられる。壁面を貫通する空気量を表す物理量として気密性能がある。そこで,建物の住機能維持限界を建築環境工学(建物の気密性能)から評価する方針に修正し,既存の気密性能測定法に基づくRC壁の気密性能評価実験方法を開発し,典型的なRC壁の一部を模擬した試験体を用いて載荷と気密測定を繰り返す実験を行った。実験より,RC壁の損傷と気密性能(C値)の関係を評価し,その関係を用いて研究対象の建物の住機能維持限界について検討した。その結果,被災RC建物を対象に,気密性能(C値)の制限に基づいて住機能性を維持できる限界を評価することができた。また,建物の住機能性能を保証する構造設計法の枠組を提案するため,日本建築学会・性能評価指針の方法を応用し,標準的な設計用加速度応答スペクトル(地震力)を基準として,各種の限界性能(機能維持限界性能,終局限界性能等)に至る地震力倍率を評価する手順を示し,対象建物を対象に各限界性能について比較・検討を行った。その結果,建物の住機能性を保証する構造設計法の可能性を示した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件)
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