研究課題
特別研究員奨励費
本研究では,水環境中の物質輸送予測の高度化を目指し,コロイド粒子の凝集に対する流れ場の動的影響を明らかにするために,非定常剪断流中でのコロイド粒子の凝集ダイナミクスを解明することを目的とした.当該年度の研究成果は,以下の通りである.実際の環境中では,大小さまざまな大きさのコロイド粒子が混在しており,異なる粒子間のヘテロ凝集がより重要である.特に,剪断流中の凝集理論では,小粒子と大粒子の粒径比が減少するに伴い,ヘテロ凝集速度が劇的に遅くなることが指摘されていた.しかし,実験的には,異径粒子間の乱流中におけるヘテロ凝集速度が,小粒径比において理論ほど大きく減少しないという問題があった.そこで,剪断流だけでなく伸長流を用いた理論に基づき,ヘテロ凝集速度の粒径比依存性を計算し,3つの異なる粒径比において測定された実験値との比較を行った.その結果,剪断流中の理論値よりも伸長流中における理論値がより実験値と近いという結果が得られた.この結果は,乱流のマイクロスケールでの流れが剪断流よりも伸長流により近似できることを示唆していると結論づけた.環境中では,潮汐による波のような非定常な流れが存在している.しかし,既往研究では,一様剪断流といった定常層流や,乱流中の凝集に着目しており,これら2つの中間の流れである非定常層流中の凝集に関する研究は十分ではなかった.そこで本研究では,流量の時間変化をプログラムできるシリンジポンプと光学顕微鏡から成る実験系を設定した.この実験系中に非定常振動流を発生させ,この流れによるコロイド粒子の凝集速度を一定体積中のコロイド粒子の計数に基づく,凝集の進行による粒子の数濃度の減少から測定した.得られた実験結果を拡張した既存の理論との比較を行い,流量の振幅,すなわち最大の剪断速度が増大するにつれて凝集が促進される傾向があることが示された.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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