研究実績の概要 |
今年度は, 前年度に引き続きプラズマ波動の到来方向推定手法の提案と, その推定結果の信頼性の評価方法について検討を行った. あらせ衛星搭載PWEデータから, 絶対方向推定を行うための方法と複数のプラズマ波動が同時に到来する場合の伝搬方向推定結果の信頼性の擬似データを用いた評価を行った. Means法を用いてあらせ衛星の実観測データから時間-周波数ごとの波動伝搬方向を計算し, 安定して伝搬方向が推定できているを確認した. また, ポインティング・ベクトルを計算した結果, コーラスの理論的解析から得られる事実と一致していることを確認した. 以上の解析結果は, 2017年10月の学会で発表した. また, ジオスペースのプラズマ分布を把握するためには, 伝搬方向推定解析(逆問題)と波動伝搬シミュレーション(順問題)を組み合わせる必要がある. VLF波動の伝搬シミュレーションでは, レイトレーシング法が主に用いられる. 電子密度モデルにGCPM v2.4, 国際電離層標準IRI2016を, また背景磁場モデルとして12世代のIGRFとTsyganenko (TS05)の組み合わせを利用可能なように, 従来研究で開発されたレイトレーシングプログラムの改良し, それを活用して観測事例を理論的に説明するための基礎的な検討を行った. さらに, 自然科学データ解析技術の中で特に重要である高精度な判別器の設計に取り組んだ. 具体的には, 鉛直ドップラーレーダデータによる高精度な降水強度推定を目指し, 降水種別の分類を行う判別器をAutoEncoderと3層NNを用いて構築した.本システムは降水粒子を6分類するものでF値91.5%となっており非常に高い判別性能を示した. 種別ごとの物理特性や, 予測性能についても検証した.
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