研究課題
特別研究員奨励費
近年、量子情報理論を用いた場の理論や双対重力理論の研究は大きな発展を続けている。その流れの下、本年度、我々は、エンタングルメント・エントロピー(EE)や非時間順序相関関数(OTOC)の時間発展を解析した。そして、ゲージ・重力対応の機構の理解に役立つと期待される量子状態の経路積分に関する効率化手法を提案し、議論した。さらに、その手法を用いた場の理論の量子状態の計算複雑度の定式化への方策を提案した。量子状態の時間発展については様々な特徴づけがあるが、最近、ゲージ重力対応における量子カオスやブラックホールと関係する乱雑な時間発展が大きな注目を浴びている。その時間発展の指標として、EEやOTOCが活発に議論されている。我々は、自由スカラー場の(T2)n/Znオービフォルド理論におけるツイスト演算子による励起状態に対して、それらの指標の時間発展を議論した。トーラスのパラメーターにより、この理論は可積分な有理共形場理論や非可積分な無理共形場理論(ICFT)にもなる。我々は、ICFTになる場合にEEやOTOCの時間発展がこれまで議論されてきた可積分な系とも最大カオス的(ホログラフィック)な系とも異なる中間的な振舞いをすることを示した。ゲージ・重力対応はこの20年で非常に多くの検証がなされたが、その機構については十分な理解が得られていない。その機構を理解する手立てを模索するため、我々は、量子状態の効率的な構成に用いられるテンソルネットワークのアイディアを応用した、場の理論の経路積分の“効率化”の手法を提案した。そして、共形場理論の基底状態などの波動関数や縮約密度行列やEEに対してその手法を用い、それらの重力双対が再現できることを示した。これらに加え、明確な定式化のない場の理論の量子状態の計算複雑度に対し、我々の手法が興味深い方策をあたえることを示した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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