研究課題
特別研究員奨励費
ボーズアインシュタイン凝縮(BEC)は、低温のボーズ粒子系に起こる相転移現象であり、自発的対称性の破れの典型例である。相互作用を持つボーズ粒子系に対する摂動論的な取扱いには、いくつかの困難や疑問点があった。それは以下のようにまとめられる。(i) 通常の手続きで摂動展開すると、系の一粒子励起にエネルギーギャップを生じる。これはゴールドストーンの定理と矛盾する。また、このようなギャップを消す手続きを取ると、系が動的保存則を破る(ホーヘンバーグ、マーティン 1965)。(ii) 一粒子グリーン関数と二粒子グリーン関数の極は一致する(ガボレ、ノジェール 1964)。これらの極はそれぞれ個別励起と集団励起に対応するもので、密度揺らぎを媒介とする集団励起と、局所的な粒子の励起である個別励起が同一であるというのは物理的な直観と反する。これらの困難に対して、(i)を解消する理論が報告された(北 2009)。この理論によると一粒子グリーン関数と二粒子グリーン関数の極は一致しないことが示される。そこで、本研究においては、(ii)についての検証を非摂動論的な手法を用いて検証した。その手順を要約する。一粒子スペクトル関数と、動的構造因子に対して周波数に対するモーメントを取る。この手法を用いると、スペクトル関数の極および半値幅を、周波数の期待値として表現できる。その表式を変分モンテカルロ法により評価した。このような手法は、ファインマンら(1954,1956)やギルヴィンら(1986)などによって、動的構造因子のスペクトルを評価するために構成されており、本研究ではそれを高次のモーメントに拡張し、また一粒子スペクトル関数へと適用した。以上の手続きによる検証の結果、個別励起と集団励起は異なるという結論を得た。また、この作業で着想を得、正準集団における相関関数の構成法も併せて開発した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 85 号: 11 ページ: 114603-114603
10.7566/jpsj.85.114603
巻: 85
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