研究課題
特別研究員奨励費
現代の急速な高度情報化社会の発展に伴って、電池の高性能化・高安全化が求められている。現在の電池では電解質として有機液体を使用しており、液漏れや発火事故など、安全性の問題が指摘されている。そこで電解質として固体を用いた全固体型電池の研究が盛んに行われているが、固体中では液体に比べてイオンの拡散が遅く、高いイオン伝導性を示す固体電解質の開発が課題となっている。ヨウ化銀(AgI)の高温相であるα相は銀の超イオン伝導体として知られ、固体電解質としての研究が古くからなされてきた。しかし147 ℃以下ではβ/γ相に相転移してイオン伝導性が著しく低下することから、電池への応用には大きな課題が残されている。このような課題を解決する方法の一つとしてAgIのナノサイズ化が知られており、粒子サイズを小さくすることでα相が低温まで安定化されることが先行研究により報告された。粒径6 nmのAgIナノ粒子では37 ℃までα相が安定に存在するが、依然として室温までα相を安定化させた報告例はない。そこで本研究では、「サイズ」・「圧力」・「陰イオン混合」に着目し、AgIのα相を室温以下まで安定化させることを目的とした。当該年度では臭化物イオンとヨウ化物イオンを混合させた臭化ヨウ化銀(AgBr1-xIx、x = 0~1)ナノ粒子を数種類作成し、結晶構造、相転移挙動、イオン伝導性を詳細に調べた。その結果、x = 0.5~1の試料については臭素の量が増えるに従ってα相の転移温度が低温にシフトし、特にx = 0.5~0.7の試料では室温でもα相が安定に存在することが明らかになった。これは常温常圧でα相を安定化させた初めての例であり、今後の全固体型電池の研究の上で非常に重要な結果であると考えられる。また、その他にも粒径3 nmのAgI量子ドットや圧力下におけるAgIナノ粒子の相転移挙動についても研究を行った。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Am. Chem. Soc.
巻: 139 号: 4 ページ: 1392-1395
10.1021/jacs.6b11379