研究課題
特別研究員奨励費
空間的に非一様なランダムネスが系の臨界的な振る舞いに対してどのような影響を及ぼすのかという問題は長年にわたって統計力学における中心的な課題の一つであった。クリーンな系の臨界現象を議論する際に有効な摂動論的な繰り込み群の手法をランダム系に適用すると、「次元削減」(Dimensional reduction)と呼ばれる結果が得られることが70年代から知られている。この性質は、ランダム系の臨界的な振る舞いが次元の2だけ低いクリーンな系のそれと等しいことを予想する。しかしながら次元削減は常に成立しているわけではなく、低い次元では誤った結論を導いてしまうことがある。こうした次元削減の破れはランダム系には素朴な摂動論では捉えられない非自明な物理が潜んでいることを示唆している。本研究では非平衡外力によって駆動されるランダム系の相転移や臨界現象を対象としている。この場合にも平衡系と同様に摂動論的な繰り込み群は破綻することが予想される。非平衡系に特有の非摂動論的な振る舞いを評価する上で、非平衡版の次元削減を定式化し、それがいつ・どのように破れるのかを明らかにすることは重要である。そこで本年度は、非平衡定常状態に駆動されるランダム系のある種のモデルに関して、新しいタイプの次元削減を導入し、非摂動論的な繰り込み群の手法を用いてそれがどのような場合に成立するのかを調べた。具体的には、ランダムポテンシャル中を一様かつ定常な速度で駆動されるスピンモデルと弾性界面の二種類のモデルを考える。温度がゼロの場合には、ある現象論的な議論から、これらのモデルの臨界的な振る舞いは次元が1だけ低いクリーンな平衡系のそれと等価であることが予想される。続いて非摂動論的繰り込み群を適用することで臨界指数を計算し、それを次元削減から予想される値と比較した。さらに、次元削減が成立するパラメーターの範囲も決定した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件)
Physical Review B
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