研究課題
特別研究員奨励費
今年度は、まず、非線形応答を用いた高解像顕微鏡法の検討を進めた。金属ナノ粒子の散乱光に見られる高次の非線形応答を利用することで、光学顕微鏡の結像特性を非線形に変化させ、超解像観察を行うことができる。しかし実用面では、非線形信号は微弱なため、信号量を増加することが必要である。本研究では、共焦点顕微鏡の光学系において、ピンホールと点検出器の代わりにCCDカメラを用いるイメージスキャニング顕微鏡法を非線形応答と組み合わせた。撮像した像を空間的に再配置することで、ピンホールと同様の空間分解能を維持したまま、取得する信号光を増加させることができる。結像特性を評価するため、光の干渉等を無視できるインコヒーレントな信号である蛍光を用いた。非線形応答として、蛍光の2光子励起を利用した。取得した像の信号対雑音比は、通常の共焦点像に比べ約1.3倍に改善した。さらなる空間分解能向上のために、対物レンズの瞳面に振幅マスクを用いた。瞳の外縁部と中心部のみを透過するリング形状をマスクに用い、3次元方向の空間分解能を向上した。2光子励起と蛍光の飽和の組み合わせによる4次の非線形応答を用い、マスクによって発生する副産物であるサイドローブを低減した。空間分解能は1.3倍に改善した。また、試料の深部100 umでも同様の改善を示した。開発した高解像顕微鏡法は非線形応答を利用していることから、金属ナノ粒子の散乱光イメージングにも応用が期待できる。金属ナノ粒子の非線形応答解明のため、従来の金ナノ粒子に加え、金ナノロッド及び銀ナノ粒子でも散乱光特性を測定した。吸収・散乱のプラズモン共鳴波長の違いから、散乱光の非線形応答が吸収の共鳴に起因することが示唆された。以上の成果を3本の論文にまとめ、学術誌に発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件)
Optics Letters
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