研究課題
特別研究員奨励費
不斉金属錯体触媒における立体異性体の制御は、高反応性・選択性獲得のために重要である。特にオクタへドラル錯体と3座配位子の組み合わせに注目すると、fac/mer幾何異性体の形成が問題となる。従来この制御には、構造的制限されたfac/mer特異的配位子が代表として用いられてきた。mer錯体が熱的な安定性に優れている一方で、fac錯体は、3座配位子以外の残りの3つの配位場をトランス影響によってコントロールすることが可能な魅力的な構造である。このような研究背景のもと、本研究では非対称型直線性3座配位子を用いたfac選択的な錯体合成法の確立を目指した。標的としたsp3P/sp3N/sp2N混合系直線性3座配位子R-BINAN-Py-PPh2は、BINAPの1つのジフェニルホスフィノ基がピリジルメチルアミノ基に置き換わった構造的特徴をもつ。ビナフチル3位フェニル置換体(L1)と無置換体(L2)の2種類を合成した。これらの配位子を用いて、オクタヘドラル構造を取りやすい2価のルテニウム前駆体を取り上げ、その錯体形成実験を実施した。L1に対してRuCl2(dmso)4をTHF溶媒中マイクロウェーブ照射下30分間加熱すると、fac-RuCl2(L1)(dmso) が定量的に得られた。この構造はX線結晶構造解析によってfac構造であるとが確認された。ビナフタレン3位のフェニル基とピリジルメチルアミノ基との立体反発によってfac選択性が発現したこと思われる。L2に対してはRu(C6H6)(CH3CN)3](BF4)2を前駆体として錯形成を行い、このものに対して、互いがトランス位に配位子辛いジメチルスルホキシドで配位子交換を行うと、ベンゼンが3つのDMSOで置換されたfac-[Ru(L2)(dmso)3](BF4)2が定量的に得られた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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