研究実績の概要 |
(1)1残基のシステインを導入した6つのLysozyme変異体(K19C, S39C, S46C, N55C, V131C)に対して蛍光色素Setau-425-maleimide(以下Setau)を用いて選択的にラベリングを行ったサンプルに対し、CD測定スペクトル測定及び蛍光異方性解消法による測定を行うことでタンパク質の変性曲線に沿った局所部位の回転緩和速度の挙動を調べた。その結果、CD測定により得られた各変異体の変性曲線にはほとんど違いが見られなかった。一方、局所部位の回転緩和速度の挙動は変異体によって異なることがわかった。この結果はラベリングした局所構造の壊れやすさ、及び壊れた後の構造の動きやすさが局所構造ごとに異なることを反映していると考えられ、各局所構造を平均化した情報からは得られない挙動を捉えている考えられる。しかし、結果に対応する具体的な分子論的な描像は得られておらず、今後ラベリング箇所を増やして測定を行いタンパク質構造のより広範な領域の情報を得る必要がある。 (2)蛍光異方性解消法をタンパク質反応ダイナミクス観測に適応するためにはデータ取得に要する時間をできるだけ短くする必要があるため、ストリークカメラを導入し、単一光子計数法による測定からアナログ測定に切り替えることで、データ取得時間を最短4ミリ秒まで短縮した。ストップトフローシステムは所属研究室で開発中のものを用いた。測定デッドタイム計測の結果からミリ秒程度の時間スケールでは、回転緩和速度は溶液混合後の流れの影響をほとんど受けないことがわかった。しかし、本システムには2液の混合比率が不安定、測定セル内の溶液が一回の混合で完全に交換されないという問題があり、現在改良を行っている。上記の問題を解決後、各Lysozyme変異体のリフォールディング反応ダイナミクス計測を行いたいと考えている。
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