研究課題
特別研究員奨励費
申請者は、海洋アルカロイドdiscorhabdin Vの合成研究に取り組んだ。Discorhabdin Vはヒト結腸がん細胞に対する細胞毒性を有しており、創薬シード化合物となり得る。また、ピロロイミノキノン構造ならびにアザビシクロ[3.3.1]構造を含むスピロ環構造を有する高度に縮環した天然物であり、合成化学においても興味深い天然物である。しかし、これまでに置換基の相対および絶対立体配置は明らかになっておらず、全合成も達成されていない。申請者は、discorhabdin Vの全合成と構造決定を達成するべく研究を開始した。まずは、多置換トリプタミン誘導体を合成した。本トリプタミン誘導体はこれまで、文献既知法を参考に合成可能であったが、低収率の工程を含むことや再現性に乏しかったため大量合成が困難であった。そこで、オキシムスルホナートの環拡大反応によるインドール合成を鍵とする改良合成法を確立した。その結果、既存法に比べて短工程でトリプタミン誘導体を合成可能になり、各工程の収率も良好であった。続いて、全合成に向け、トリプタミン誘導体からピロロイミノキノン骨格への変換を検討した。検討の結果、保護基の除去により生じたカテコール中間体が、空気雰囲気下において酸化と環化を連続的に起こし、ピロロイミノキノンを一挙に与えることを見出した。さらに、数工程の変換で導いた前駆体に対してHeck反応の条件を適用し、アザビシクロ[3.3.1]骨格構築に成功した。その後、保護基の除去と分子内脱水縮合を一挙に行い、discorhabdin Vの基本骨格に相当する六環性化合物の合成を達成した。残された課題は酸素原子と臭素原子の導入のみであり、全合成に迫った。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Angewandte Chemie
巻: 57 号: 19 ページ: 5413-5417
10.1002/anie.201801495