研究実績の概要 |
昨年度までの結果を踏まえて本年度は、負極材料としてハードカーボン(HC)、正極材料としてクロム酸ナトリウム(NaCrO2)、電解質としてNa[FSA]-[C3C1pyrr][FSA] (FSA = bis(fluorosulfonyl)amide, C3C1pyrr = N-methyl-N-propylpyrrolidinium) に絞り、Na金属参照極を用いた三極セルでHC/NaCrO2フルセルの充放電挙動を調べた。特に、電解質中のNaイオン濃度がフルセルのレート特性に与える影響を重点的に検討した。試験は60℃で行った。 まず、充電レートを0.5Cに固定し、放電レート特性試験を行った(1C = 100 mA (g-NaCrO2)-1)。モル分率x(Na[FSA]) = 0.2, 0.3, 0.4, 0.5の組成の電解液を用いた場合において、いずれも0.5Cレート放電では90 mAh (g-NaCrO2)-1前後の容量が得られたが、4Cレート放電では各組成での容量が14, 34, 47, 68 mAh (g-NaCrO2)-1となり、Na[FSA]の割合が高い電解液中では高容量を維持した。低Naイオン濃度の電解液では、高レート放電においてNaCrO2正極の電位が急速に低下しており、正極での反応が律速になっていることが分かった。次に、放電レートを0.5Cに固定し、充電レート特性試験を行ったところ、4Cレート充電では放電レート特性と同様にNa[FSA]の割合が高い電解液を用いた場合に良好な容量維持率を示した。低Naイオン濃度の電解液では、高レート放電においてHC負極の電位が充電終了時に0 V vs. Na+/Naに到達しており、負極での反応が律速になっていることが分かった。 以上から、充電および放電において、Naイオンが挿入される側の電極が律速になっていることが明らかとなった。
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