研究実績の概要 |
報告者は当該年度では、(1)当該研究課題の二つの下位研究として、幼児における意図推論とワーキングメモリの関連性を実証的に検討したもの(Meng, Murakami & Hashiya, 2017)と、大人における援助行動に影響するボトムアップのプロセスを検討したもの(Miyajima & Meng, 2017)とを学術論文にまとめ、それぞれ国際誌PLoS ONEおよびBMC Research Notesに発表した。また(2)国内学会・研究集会等で数回の研究成果発表を行い、1件の若手優秀発表賞も受賞した(自然科学研究機構・生理学研究所主催;「次世代脳プロジェクト・冬のシンポジウム2017」)。特筆すべきは、(3)これまでの一連の研究が評価され、第8回日本学術振興会育志賞を受賞したことである。九州大学においても平成29年度学生表彰(学術研究活動表彰)を受けるなど、研究業績は高く評価されている。(4)当該研究課題におけるこれまでの研究成果は博士論文「教示行為の基盤となる他者の知識・注意状態理解の初期発達」として結実し、博士(心理学)の審査に合格した。 総合的には、報告者は従来の理論を踏まえ既存の実験手法にシンプルかつ独創的な方法で組み合わせることで、乳児が(大人の要求を読み取るのみでなく)自発的に「教えたがる」傾向を持つこと、さらに、他者の知覚・知識状態を踏まえて「何について教えるか」を柔軟に変化させていることを示し、相互的コミュニケーションの担い手としての乳児という新たな展望を実証的 に提示した点は極めて高く評価できる。また、「教える-教わる」という両側面の発達に研究視野を拡張することで、ヒト独自のコミュニケーションが切り拓いた文化伝達の発達的起源に迫る学術的インパクトを持つ成果をもたらした。
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