研究課題
特別研究員奨励費
環太平洋域の沿岸には、「津波石」が存在している。この津波石は、過去の津波によって運ばれた巨石のことを指し、津波の規模を反映している。したがって、津波石の移動年代を求めることで、過去の津波の年代と規模が推定できる。これまでの研究では、津波石に付着する貝殻やサンゴの生物遺骸に含まれる放射性元素を用いて津波の発生年代を決定してきた。しかし、放射性炭素年代は津波石が陸上に打ち上げられ、海生生物が遺骸となった年代は推定できるものの、繰返し移動を経験した場合の年代は決定できない。そこで本研究では、津波石中の磁性粒子が地磁気の方向を記録することと、移動後に新たな方向の磁気を獲得することを利用することで、津波石が保持する残留磁気を用いた年代決定法を目的としている。今年度は以下の内容を実施した。1、古い年代を算出してしまう問題を解決するため、昨年度までに開発した拡張型の年代推定法を多量の岩石試料を分析することで検証した。この結果、天然の岩石試料では従来の年代決定法で説明可能な場合と、拡張型の理論の方がより良くフィットする場合の2パターンが存在することがわかってきている。2、トンガ王国に存在するサンゴ起源の津波石試料の分析をおこなった。この結果、いくつかの試料から移動後に獲得された粘性残留磁気成分の観測に成功している。さらに新たに獲得された残留磁気の成分が複数個あるのもが存在し、津波によって複数回移動した可能性を示唆することができた。昨年度の調査で新たに発見した津波石については、ウラン・トリウム年代の測定をおこなった。その結果、2つの津波石から22万年前程度の移動年代を得ることができ、これまで報告されて来たウラン・トリウム年代は12万年程度であったため、さらに古い時代に津波があった可能性を示唆した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 121 号: 11 ページ: 7707-7715
10.1002/2016jb013281