27年度の研究は主にdormant operやそれらのモジュライ空間のより具体的な性質について研究し、論文にまとめた。私の以前からの研究により、点付き安定曲線上定義されたdormant operの理論の基礎付けが行なわれ、さらに組み合わせ論やGromov-Witten理論といった他領域との関連性が見出された。次のステップとして、私はその関連性をより深く理解するため、次に述べる研究を27年度に行い成果を得た。まず初めに、階数nのdormant operと階数p-nのdormant operとの間の双対性を見出し、論文にまとめた。これは安定ベクトル束において存在する双対性の類似とも見做せるものである。この結果により、今までほとんど理解されていなかった高階数のdormant operを分類するモジュライの構造を調べることができるようになった。次に、dormant operの「通常性」なる概念を定義し、双曲的代数曲線の通常性において確認される或る種の性質の類似とも呼べる結果を導いた。 また、関連するGromov-Witten理論の物理的背景から、超Riemann面(より一般に、超代数曲線)のモジュライ空間に関する研究も行った。具体的には、超スタックの一般論を整備し、超代数曲線のモジュライの(P. Deligneによるものとは異なる)平滑コンパクト化を超スタックにより構成した。さらに、超スキームに関する圏論的表現に関する或る種の忠実性を示し、論文にまとめた。
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