研究課題
特別研究員奨励費
本年度は、申請書の通り、凝縮系において低励起光強度で駆動し、かつ大きなアンチストークスシフトを示す三重項-三重項消滅に基づくフォトン・アップコンバージョン(TTA-UC)の達成を目標と掲げて、次の三項目について研究を実施した。1.ハロゲン化鉛ペロブスカイトのナノ結晶について三重項増感機能を検討した。ハロゲン化セシウム鉛ペロブスカイトのナノ結晶を作製し、その表面を三重項アクセプターで化学修飾すると、ペロブスカイトからアクセプター分子への三重項エネルギー移動が起こり、TTA-UC発光が得られることを見出した。この成果は三次元構造を有したペロブスカイトを用いて三重項増感を達成したはじめての例であり、ペロブスカイトの励起状態について重要な知見を与えるものである。2.凝縮系における遅い分子拡散ならびに、ドナー分子とアクセプター分子の相分離現象を解決すべく、液晶性のアクセプターを開発し、エネルギーマイグレーションを用いたTTA-UCについて検討した。液晶中での三重項エネルギーマイグレーションを、過渡吸収測定および粉末 X 線回折測定より評価することで、従来未解明であったTTA-UCと分子構造秩序の間の関係を明らかにした。3.UC発光色のスイッチングという新たな機能発現に成功した。結晶ならびに過冷却固体で異なる発光波長を示す蛍光性シクロファンをアクセプター、重原子効果によって基底一重項から励起三重項への直接遷移が可能なOs錯体をドナーとして用いることにより、緑色と黄色のUC発光色を熱可逆的にスイッチングすることに成功した。この結果は、項間交差による励起エネルギー損失のないドナー分子と柔軟性を有するアクセプター分子の構造双安定性を結び付け、そのアンチストークスシフトを最大に活かすことにより初めて達成されたものであり、分子組織化に基づくTTA-UCに二波長変換という新しい局面を開いている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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