研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、トキソプラズマ感染によるマウスの行動変化のメカニズムの解明を目指し、神経機能の改変に関わるトキソプラズマ由来エフェクター分子の同定と、その分子と宿主細胞との相互作用の解明を目的とした。前年度は宿主のシグナル伝達経路に作用する原虫由来のエフェクター分子のスクリーニングを行い、宿主細胞のNuclear Factor-kappa B (NFκB)シグナルを活性化する原虫遺伝子(知的財産権の都合上、以後Xと仮称)を同定した。近年、NFκBは中枢神経系においても重要な転写因子であることが明らかとなりつつあり、神経細胞におけるNFκBシグナルの改変はトキソプラズマによる宿主の行動変化の標的であることが期待できる。今年度はまず、T. gondii-Xの機能解析を行うためにX欠損原虫の作製を行った。遺伝子欠損原虫はCRISPAR/Cas9のシステムを用いて、Xの遺伝子領域に薬剤耐性遺伝子の発現カセットを導入することで作製した。正しい遺伝子組換えを確認できたクローンを選択し、X欠損株とした。次に、親株とX欠損株を用いてNFκBシグナルの活性化をレポーターアッセイにより確認した。その結果、X欠損株感染細胞では親株感染細胞と比べてNFκB依存的なレポーター活性が低下していた。続いて、細胞内でのシグナル伝達の変化を検討するために、NFκBの活性化に関わるIκBαのリン酸化とp65の核内移行について解析した。その結果、X欠損株感染細胞では親株感染細胞と比較して、リン酸化IκBαのタンパク量の減少とp65の核内移行割合の低下を認めた。以上の結果から、T. gondii-XがNFκBシグナルを活性化する因子であることが示された。今回の研究により、宿主の細胞内シグナル伝達の改変を担う新規のトキソプラズマ由来のエフェクター分子が同定された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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