研究実績の概要 |
本年度、本研究員は①アオコ形成ラン藻Microcystisの成長阻害を引き起こすファージのゲノム解析と②メタゲノム解析を用いたアオコ環境中のファージ多様性および群集組成の解明を行った。 ①ファージのゲノム性状を明らかにするためにキサントゲンサン-SDS法によりゲノムを抽出し、得られたゲノムを次世代シーケンサーMiSeqに供した。得られたリードに対して解析ソフトVelvetおよびGlimmerを用いてORF(Open Reading Frame)を推定した。ORFをNCBIのnrデータベースに対する相同性検索を行うことで機能推定を行った。ゲノム解析の結果、本ファージは約86 kbのゲノムおよび141個のORFを有していた。141個のORFのうち84個はデータベース上の配列と相同性を示さず、残り57個の多くも相同性が低かった。したがって、本ファージは既知のファージとは全く異なるゲノムを有すると考えられた。
②2013年10月の島根県宍道湖、2015年9月京都府広沢池、2015年9月滋賀県琵琶湖(北山田港、雄琴港)、2015年9月三重県青蓮寺湖および2015年10月茨城県霞ヶ浦から環境試水を採取し、採取した試水からファージDNAを抽出しMiSeqを用いてメタゲノム解析を行った。全6地点から1,695,896~11,844,490 個のリードが得られ、リードの7.6~15.5%がデータベース上の既知ファージと相同性(E-value >10-5)示した。このうちラン藻感染性ファージ(シアノファージ)と相同性を示したリードの割合は13.5~49 %だった。アオコが発生していない淡水域ではシアノファージの割合は5%未満であり、アオコ環境中ではシアノファージが主要構成種であることが示唆された。しかしながら、シアノファージと相同性を示したリードのほとんどは海洋性シアノファージと相同性を示し、アオコ環境中にはいまだ分離例の無い多様な淡水性シアノファージが存在すると示唆された。
|