[目的] 妊娠中の継続的な運動実施による長期的な妊婦の生理的・心理的ストレス反応の緩和効果を明らかにすることを目的に研究を行った。 [方法] 2014年11月~2016年8月に東京都内の大学病院一施設で、妊娠中のヨガのランダム化比較対照試験を行った。正常な妊娠経過にあり、運動を制限する合併症のない妊娠20週前後の初産婦をリクルートし、ヨガ群56名と対照群57名に無作為に割り付けた。ヨガ群の参加者は、分娩まで週3回以上を目標に、60分間のヨガクラスの参加(月3~5回)と自宅でDVDを用いて30~60分間のヨガの練習を行った。妊娠28週前後、妊娠36週前後で生理的ストレス反応指標の唾液中コルチゾールを測定するため、起床時、起床30分後、午後、就寝前の1日4回2日間、参加者は唾液採取を行った。心理面への効果については、心理尺度で精神的ストレス、抑うつ、不安、疲労を評価した。 [結果]妊娠28週調査では、唾液検体の得られたヨガ群38名、対照群37名を解析対象とした。妊娠36週調査では、ヨガ群42名、対照群37名を解析対象とした。妊娠28週調査では、午後の唾液中コルチゾール値ではヨガ介入群で有意に低く、ストレス緩和効果が示された。一方、妊娠28週調査の他の採取時点、妊娠36週の唾液中コルチゾール値は両群間で有意な差はなかった。また、抑うつ、不安、精神的ストレス、疲労について、妊娠28週調査、妊娠36週調査で両群間に有意な差はなかった。 ヨガの練習頻度の中央値は、妊娠28週で1.1回/週、妊娠36週で0.9回/週であり、目標としていた週3回よりも低い頻度であった。また、ヨガクラスへ参加できなかった参加者が、半数程度いたため、多くの妊婦が活用しやすいプログラムに改善することが課題である。
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