前年度からイオンサーフィン型RFカーペットの研究・開発は続けており、中心に小さな出口穴がある同心円形のRFカーペットを使ってテストを繰り返し行っていた。アルカリイオン源を用いたオフライン実験では、Heガス圧60 mbarから300 mbarまでの広いガス圧範囲における特性を評価し、最大100%の輸送・引き出し効率を達成できた。 そして次のステップとして、オフラインで開発を行ったイオンサーフィン型 RF カーペットを実際にガスセルに適用し、RI ビームを用いてガスセルの性能評価実験を行った。ガスセル全体の効率として205Frに対して最大で 29.2%が得られた。また、短寿命な核種 216Th 、217Paが引き出すことができた。 オフラインの実験に対してオンラインの効率が低いが、これはガスセルに入射したイオンがRFカーペットに到達するまでに失われてしまうためである。 次に実際にSLOWRIのガスセルに用いるイオンサーフィン型RFカーペットの実験を行おうとしたところ、問題が発生した。幅26cm 、長さ1.5mのRFカーペットを用いる予定でいたが、RFカーペットで重要な高周波電圧(RF電圧)を印加したところ、低い周波数のRF電圧しか印加することができなかった。これはガスセルのサイズに合わせてRFカーペットも大きくしたため、RFのカーペットのキャパシタンスが予想よりも大きかったためだと考えられる。 この問題の解決案として、ガスセルの中心に幅の小さなRFカーペットを設置し、そこまで静電場で運ぶ構造と、ガスセルの円筒チャンバーをアノードにし、中心に棒状のRFカーペット(外側に電極が向いている)を設置しカソードにし、そこまで1/rのポテンシャルの静電場で運ぶ構造を考えた。現在、電場シミュレーションソフトを用いて、どちらの構造が良いか、また別に適した構造がないかの計算を行い検討している。
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