研究実績の概要 |
本研究の研究実績に関して、1現象学的側面と2哲学史的側面に関わるものに大別して順に説明する。 1 平成28年度は、初期思想の関心Sorge概念の中動態に関して、初期のテクスト群を基に解明した。具体的にはハイデガーが関心概念を中動態の語を用いて中動性において理解していたことを文献的に突き止め、同時にこれの哲学史的由来としてアウグスティヌスとアリストテレスとの関連を明らかにした。さらに関心概念と新プラトン主義的な中動再帰運動の関係を解明した。これに関する発表を立命館哲学会に申請、受理され、同会大会(2016/11/13)で発表した。この発表原稿を基にした論文が学会誌『立命館哲学』(第33号)へ掲載された。また(1)後期ハイデガーの思想と、(2)現在注目されている新実在論(Neu-Realismus)の提唱者であるM.ガブリエルの思想、そして、(3)ガブリエルの背景にあるシェリング研究、(4)ガブリエルによるハイデガーとシェリングと関係に関する議論、この4点と中動態そして(下で説明する)竈についての口頭発表を、ヴッパタール大学(ドイツ)で開催された学会「The New Faces of Realism. Metaphysics, Phenomenology, Speculative Realism」で行った。 2 平成28年度には、1960年代の最後期ハイデガーのテクストに関する更なる調査によって、30年代初頭から見られる竈の問題が60年代の最後期まで問題事象として一定の同一性を保ったまま維持され続けていたことを明らかにした。加えて、更なる別の文献調査の結果、F.ニーチェのテクストにおける竈に関して解明した。またシェリングの前期から後期のテクストにも竈の概念を発見することができた。 以上1と2の成果をまとめた学位論文を立命館大学文学研究科に提出し、受理され、博士号を授与された。
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