研究課題
特別研究員奨励費
本研究課題の目的は、急性呼吸器症状を呈した患者から分離されたコウモリレオウイルス(PRV)の感染受容体を同定し、PRVの感染、病原性発現機序を明らかにすることである。これまでに我々は、PRVの侵入・吸着過程には構造タンパク質σCに依存する経路と他の構造タンパク質(σB/μB)に依存する経路が存在することを示唆する結果を得ている。今年度は以下の研究成果が得られた。1.shRNAを用いたノックダウン法によりσC受容体の同定を試みた。A549細胞およびMDCK細胞では、σC-nullの感染性が顕著に低下するため、これらの細胞ではσC受容体が豊富に発現していると考えられる。A549細胞とMDCK細胞において、多く発現が認められる膜タンパク質をデータベースから検索し、FLRT2、TMCO3、 TMCO7、TMEM43、TMEM109、TMPRSS9、PGRMC1およびVAPAをσC受容体の候補因子として得た。これら候補因子について、shRNAを発現するレンチウイルスを作製してA549細胞に接種することで、ノックダウン細胞を樹立した。ノックダウン細胞に野生株を接種して、感染抵抗性を指標として候補因子がσC感染受容体であるかを検討したが、すべての細胞が死滅し、候補因子内にはσC感染受容体が存在しないことが示唆された。2.σCをコードするS1分節のリアソータントウイルスを作製し病原性を解析した。コウモリから分離されたネルソン株(NB株)とヒトから分離されたMB株のS1分節の相同性は57.9%であり、10分節の中で最も低い。コウモリからヒトへの病原性獲得機序を明らかにするため、S1分節のみをNB株と入れ替えたモノリアソータントウイルス(NB-S1)を作製した。NB-S1の病原性を解析した結果、マウスでの病原性が低下しており、S1分節が病原性の違いを規定していることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of National Academy of Sciences
巻: 114 ページ: 2349-2354
PLoS Pathogens
巻: 12 号: 2 ページ: e1005455-e1005455
10.1371/journal.ppat.1005455