研究課題
特別研究員奨励費
幹細胞は自身が枯渇することなく長期間維持するためには、分化関連遺伝子の転写を抑制し、未分化性を保つ必要がある。これまでに転写抑制性のマークとして知られるヒストンH3K27me3とH2AK119Ubは、どちらも幹細胞の未分化性維持に重要な働きを持つことが報告されてきた。一方、同じく転写抑制性のマークとして知られるH3K9me3は、その修飾酵素Eset (別名Setdb1) のノックアウトマウスが胎生致死であることから、幹細胞における詳細な役割は不明であった。今回、Esetを薬剤誘導的に欠損可能なノックアウトマウスを作成し、造血幹細胞における機能を検証した。生体においてEsetを欠損させたマウスは、造血幹細胞から骨髄球系前駆細胞にかけて未分化な造血細胞が著減し、速やかに死亡することが明らかとなった。また、Esetを欠損させた造血幹細胞を検証したところ、細胞周期の遅延とアポトーシスの頻度が有意に亢進し、骨髄再構築能が失われていたことが明らかとなった。Esetを欠損させた造血幹前駆細胞を用いて、RNA-sequence解析とH3K9me3抗体を用いたChIP-sequence解析を行ったところ、糖新生酵素Fbp2が脱抑制し、造血細胞において解糖系が阻害され、ATP産生量が減少していることが明らかとなった。本研究成果は、造血幹細胞におけるH3K9me3の働きを初めて報告したものであり、血液専門誌Bloodに掲載された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Blood
巻: 128(5) 号: 5 ページ: 638-649
10.1182/blood-2016-01-694810