1990年代以降の日本社会では「保守」を自称する運動が活発な動きをみせてきた。社会運動研究はこれまで、いわゆる「左派」に分類される運動団体を対象としてきたが、歴史修正主義にもとづく中学校歴史・公民教科書の作成とその採択運動を行う「新しい歴史教科書をつくる会」が1990年代後半に結成されて以降、保守運動への学術的関心は高まっている。 日本国内における保守運動研究は2000年代以降になってようやく取り組まれるようになったのに対し、米国ではキリスト教福音派を中心とした「ニューライト」と呼ばれる保守運動を対象とした研究が長年に渡って蓄積されている。そのなかで、米国のフェミニズム研究は保守運動の女性参加者に注目し、「なぜ女性が保守運動に参加するのか」という問いをめぐって議論が行われてきた。日本でも保守運動への女性の参入は相次いでおり、女性中心の保守運動グループが登場しているものの、その実態は十分に把握されておらず、また、女性に着目しながら保守運動を論じる研究も未だ少ない。 そこで本研究では、文献研究やフィールドワーク、インタビュー調査、記事分析といった質的データを質的に分析しながら女性による保守運動の実態を明らかにすることを通して、米国のフェミニズム研究のち県を援用しながら、現代社会の「右傾化」を捉えるための新たな視座を提示することを目的とした。
|