研究実績の概要 |
昨年度までに本特別研究員が単離・構造決定を行った洋軟体動物アメフラシ由来の9,11-セコステロイド化合物 アプリシアセコステロールAは、新規の三環性骨格を有する化合物であり、またこの化合物は天然から微量しか得られないため、更なる生物活性試験への量的供給を目的とした全合成研究を行った。 本年度は、この化合物Aが持つ新規三環性骨格部分の合成研究に着手した。Hajos-Parrishケトンを出発原料とし、5工程で立体選択的にアプリシアセコステロールAが有するアセタール部分を構築した。その後、更に5工程の合成を経て新規三環性骨格部分のラジカル環化前駆体を得た。アプリシアセコステロールAの新規三環性骨格部分の合成まで、このラジカル環化の一工程を残すのみであり、今後はラジカル環化の検討及びaplysiasecosterol Aの全合成を目指す予定である。
昨年度までに海洋軟体動物アメフラシから単離・構造決定を行った新規9,11-セコステロイド化合物 アプリシアセコステロールA, B, Cの抗炎症活性試験を行った結果、活性は見られなかった。しかしながら、この際北アフリカの砂漠地帯に生息する低木Retama raetamの根のメタノール抽出物についても本生物活性試験を行った結果、顕著な抗炎症活性を示した (IC50 15μg/mL)。そこで、この抽出物に含まれる活性成分の探索研究を行った。 その結果、この抽出物に含まれる成分として3つの既知のフラボノイド化合物Alpinumisoflavone, Retamasin B, Ephedroidinを単離・同定した。今後、これら3つの化合物の活性評価、および他の含有成分を明らかにする予定である。
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