研究課題
特別研究員奨励費
本研究では4d系の遷移金属酸化物の中でも、ルテニウムRu周りの酸素O八面体が面共有で結合した物質に着目した。実際に研究の対象とした物質はBa3MRu2O9である。この物質は面共有で結合した二量体を内包しており、Mイオンの違いによって異なる基底状態を示す。M = Coの場合にはその基底状態は反強磁性であり、ルテニウムは磁気モーメントを持つ。一方でM = Srの時にはルテニウムは二量体内でスピン一重項を形成し、その基底状態は非磁性である。またM = Znの場合にはその基底状態は調べられていない。この研究の目的は、これらの物質の基底状態の違いについて調べることである。そのために多結晶試料を作成し、磁化率、比熱、電気抵抗率の温度依存性を測定し、放射光X線を用いて構造解析を行った。磁化率、比熱、電気抵抗率の温度依存性から、M = Znの基底状態はスピン液体状態である可能性を見出した。また構造解析の結果、この基底状態の違いは、二量体間のRu-Ru距離が長くなる毎に反強磁性、量子スピン液体、非磁性へと変化していくことが明らかになった。さらにZnサイトを一部CaやCoへと置換することにより、この基底状態の変化が連続的であることが判明し、最終的にこの物質系の磁気相図を作成した。これらの結果は二量体内のルテニウムの磁気相互作用と二量体間のルテニウムの磁気相互作用の競合により発生していることを強く示唆している。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Crystals
巻: 6 号: 3 ページ: 27-38
10.3390/cryst6030027
J. Phys. Soc. Jpn. 84 (2015) 094601
巻: 84 号: 9 ページ: 094601-094605
10.7566/jpsj.84.094601