研究実績の概要 |
本年度は、OTUB2やRNF4が相同組換え修復に及ぼす影響について解析を行った。 まず、OTUB1/OTUB2がRPA2 S4/S8リン酸化に生理的に関与するかを確認した。OTUB1をノックダウンしてもカンプトテシン処理後のRPA2 S4/S8リン酸化に影響はなく、OTUB1の生理的な関与は認められなかった。一方で、OTUB2ノックダウンによりRPA2 S4/S8リン酸化が低下したが、RPA2の損傷部位へのリクルートそのものが低下していた。この結果からは、OTUB2ノックダウンによりDNA end resectionが抑制されることが考えられた。続けて、RNF4に着目して解析を行った。RNF4存在下でユビキチン鎖形成が可能なE2結合酵素としては、UBCH5ファミリー,UBE2W,UBC13が報告されている。そこで、これらのE2酵素がRPA2 S4/S8リン酸化に必要か検討したところ、UBCH5CおよびUBC13が必要だった。この結果は、RPA2 S4/S8リン酸化には複数のユビキチン化経路が必要となることを示唆している。 次に、カンプトテシンへの抵抗性におけるRPA2 S4/S8リン酸化の重要性を評価するために、RPA2 S4A/S8A安定発現細胞を作製した。この細胞でのRAD51 foci形成を観察したところ、foci形成に変化は認められなかった。しかし、foci解消については遅延しており、RPA2 S4/S8リン酸化が相同組換えに必要であることが示された。 以上の研究により、脱ユビキチン化酵素OTUB2がS期における相同組換えをRPAのDNA損傷部位への局在を誘導することで促進することが示された。また、RNF4によるユビキチン化はRPA2 S4/S8のリン酸化を間接的に促進しており、このRPAのリン酸化が相同組換えに必要であることが示された。
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