研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は超原子価ヨウ素を用い、医薬品合成に利用可能な炭素-窒素結合形成反応を開発することである。近年、環境低負荷型社会への転換が求められている中で、有機合成化学の分野においても環境面への配慮が非常に重要な課題の1つとなっている。当分野で重宝されている重金属試薬は、様々な特異的な反応を進行させる非常に有用な試薬であるが、環境や生体への悪影響が懸念されるため、これらに代わる試薬の開発が現在盛んに研究されている。特に、超原子価ヨウ素化合物は、重金属と似たような性質を示すことから、重金属代替試薬としての利用が期待されている。しかし、超原子価ヨウ素の医薬品合成への利用は置換基を酸化する酸化剤としての役割がほとんどであり、新しく結合を形成する反応を利用する例は少ない。そこで私は、医薬品骨格に多く含まれるインドールをターゲットとし、新しい医薬品化合物の合成ルートを開拓できるような窒素官能基を導入する反応を探索した。その結果、独自開発したインドールを含む超原子価ヨウ素を鍵中間体とした3つの反応の開発に成功した。具体的には、超原子価ヨウ素とハロゲン化剤を組み合わせたハロ-アミノ化反応と、カップリング反応によるアミノ化反応である。まず、ハロ-アミノ化反応ではインドールの炭素-水素結合を位置選択的に炭素-窒素結合に変換できるだけでなく、同時にもう1つの炭素-水素結合も位置選択的に炭素-ハロゲン結合に変換することができる。さらに、導入したハロゲン結合の誘導化によって効率的に医薬品の部分骨格を構築できることも見出した。次にカップリング反応では、反応の選択性を超原子価ヨウ素のデザインによってコントロールし、インドールに効率的に窒素官能基を導入することに成功した。本年度は前年度の成果に加え、3つの反応の基質一般性の改善や反応機構の実験的考察、誘導化について大幅な進展が見られた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chemistry - An Asian Journal
巻: 11 号: 24 ページ: 3583-3588
10.1002/asia.201601349