研究課題
特別研究員奨励費
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の創薬研究には家族性原因遺伝子変異を導入したトランスジェニック動物の活用が主流だが、家族性ALSは全体の1割程度であり、残る9割は孤発性に発症する。孤発性ALSの病態を探るにあたり、孤発性ALS患者で減少が報告されているグルタミン酸輸送体を脊髄で欠損させたマウス(cKO)を作成し、脊髄運動ニューロン死及び麻痺を呈することを見出した。28年度までにcKOマウスの運動ニューロン死にAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)の過剰活性化、Ca2+依存性プロテアーゼのカルパインの過剰活性化が寄与すること、更にcKOの運動ニューロンは核の異常を呈することを見出してきた。そこで29年度では、核の異常が神経細胞死に与える影響について検証した。核膜孔複合体(NPC)は核膜に埋め込まれており、核ー細胞質間の輸送経路としての役割を果たす。cKOマウスではNPC構成タンパクの減少を呈したことから、核ー細胞質輸送が変化している可能性が考えられる。cKOマウスに核ー細胞質輸送を選択的に抑制するnuclear export inhibitorを1週間投与した結果、運動障害及び運動ニューロン死の進行を有意に抑制した。また、これまで短期投与で治療効果の得られた化合物を用いて6週間に渡る長期投与がcKOに与える影響を検討した結果、nuclear export inhibitorの治療効果は一過的だったが、AMPAR阻害剤、カルパイン阻害剤は長期的に運動障害及び運動ニューロン死の進行を抑制した。今年度の研究により、cKOの運動ニューロン死のカルパイン活性化後の下流カスケードの一端としてNPC構成タンパク分解と核ー細胞質輸送障害が関与しうる可能性を見出した。これらの成果をJournal of Neuroscience誌に原著論文として報告した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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