研究課題
特別研究員奨励費
ショナ社会では、あらゆる社会的危機の解決を目的に、憑依儀礼が開催される。憑依儀礼では必ず楽器の演奏や民謡の歌唱がおこなわれ、祖霊や精霊に憑依された霊媒師が病気の治療、紛争の調停や氏族長の任命などをおこなう。本研究の目的は憑依儀礼において音楽(楽器の演奏や民謡)、宗教(憑依)、政治(危機解決)の3要素を連関させる論理の解明である。その視点として、バントゥ系民族の分裂、融合、移動に注目した。ジンバブエ最大の民族集団であるショナは、ニジェール・コンゴ語族のバントゥ系民族である。バントゥは西アフリカに起源をもち、分裂や融合と移動を繰り返しながらアフリカ各地に拡大したとされる。音楽(音による儀礼空間の創出)、宗教(憑依による民族集団などの社会的地位の超越)、政治(超越的存在=霊媒師による危機解決)の連関は、集団の分裂、移動、融合に伴う社会環境の変化に適応した政治・宗教技術として発展してきたのではないか。平成29年度は3か月の現地調査をおこない、バントゥの分裂要素を視点にショナの音楽文化を分析した。まず、ショナの移動に関する口頭伝承の調査をおこなった。各氏族の伝承には、内紛や近親相姦を原因とした集団の分裂や移動が記録されていた。次に、移動に適応した祭祀楽器としてのンビラを調査した。ンビラとは小型のラメラフォンである。憑依儀礼では憑依、治療、問題解決のための議論などの重要な場面でンビラが演奏される。儀礼に招聘されたンビラ奏者は、時に100km以上も離れた場所にンビラを持参して演奏する。このようにンビラは携帯性に優れた祭祀楽器である。最後に、儀礼で演奏されるンビラの楽曲の起源譚を調査した。その結果、楽曲の多くに集団の分裂や移動が記録されていることがわかった。例えば、Nhemamusasa(仮小屋のための伐採)という曲は、集団の移動に伴う新たな集落建設を意味する楽曲である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) 備考 (2件)
アフリカ研究
巻: 88 ページ: 50-53
http://www.geocities.jp/shonaritual/
http://www.geocities.jp/shonaritual/index.html