研究課題
特別研究員奨励費
動物細胞の有糸分裂では、紡錘体は2つの極を持った菱形をしている。ショウジョウバエで紡錘体の極形成因子として同定されたASPMは、ヒトの小頭症の原因遺伝子としても知られているが、極形成における具体的な作用機序はほとんど明らかになっていなかった。そこで本研究では、ASPMの分子機能の解明を通して紡錘体の形成と機能を理解することを目標とした。前年度までにショウジョウバエ細胞におけるASPMの機能解析を行い、紡錘体極形成機構の新たな分子モデルを構築するに至った。本年度は、ヒトASPMもショウジョウバエASPMと同じように機能しているのかを明らかにするため、ヒト培養細胞を使った研究を行った。まず、ショウジョウバエASPMを欠損した際に引き起こされる紡錘体の形態異常が、ヒトASPMの欠損でも見られるかを検証するため、ASPMのノックアウト株を作成した。ところが、この細胞株では紡錘体の形態や分裂期の進行に関する異常は認められなかった。そこで、ASPMノックアウト株に対して、極形成関連因子であるキネシン14の阻害剤を加えたところ、紡錘体極の異常な分離が発生することが明らかになった。また、中心体依存的な微小管形成の活性化因子であるCDK5RAP2を分解すると、ASPMノックアウト株で紡錘体の極収束異常と分裂期の著しい遅延が引き起こされることを発見した。これらの結果から、紡錘体の極形成過程において、ASPMが中心体やキネシン14と冗長的に機能することが示された。さらに、小頭症患者のASPM変異が細胞内で及ぼす影響を検証するため、患者から同定されたASPM変異を導入した株を作成した。その結果、CDK5RAP2が存在しない条件で、同じような極収束異常が観察された。これにより、紡錘体の極収束異常が小頭症を発症させる原因であるという可能性が示唆された。現在、これらの成果をまとめた論文を投稿中である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
The Journal of Cell Biology
巻: vol. 211 no. 5 号: 5 ページ: 999-1009
10.1083/jcb.201507001