研究課題
特別研究員奨励費
本研究では,新しい炭素配位子として注目されているカルボンの i) 電子供与能の評価方法の検討,ii) 新規合成法の開発, iii) カルボンを配位子とした金(I)錯体の合成,iv) 金(I)錯体の触媒能の検討を行った。i) に関しては,ビス(イミノスルファン)カーボン(0) (BiSC) を用いたボレニウムカチオンおよびホスホニウムカチオン付加物の合成を行った。対応する付加物の11B または31P 核磁気共鳴 (NMR) スペクトル測定を行うことで,カルボンの電子供与能を評価できることが示唆された。ii) に関しては,イミノスルファン(スルファン)カーボン(0)を,過剰量のトリフルオロメタンスルホン酸で処理することで,脱イミノ化反応が進行し,2つの低原子価硫黄に安定化されたビス(スルファン)カーボン(0) (BSC) のジプロトン体BSC2Hが得られた。BSC2Hを塩基で脱プロトン化することでBSCがほぼ定量的に得られることを見出した。また,この合成法を応用することで,モノプロトン塩 (iSSCH,iSSeCH,BSCH) を配位子としたプロトン金(I)錯体の合成に成功した。いくつかの単核金(I)錯体と,すべての2核およびプロトン金(I)錯体の分子構造は,単結晶X線構造解析によって明らかにした。iv) に関しては,BSCHを配位子とした金(I)クロリド錯体 (BSCHAuCl) を合成し,ヒドロアリール化反応の触媒としてその活性を評価した。基質としてエチルプロピオレートとメシチレンを選択し,金(I)クロリド錯体と銀(I)塩を用いて触媒反応を行った。その結果,BSCHAuClは,高活性な触媒として知られるカルベン配位子と同等の触媒活性を示すことを見出した。今後,カルボン特有の高い電子供与特性を利用することで,さらなる高活性触媒の開発が期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Advances in Organometallic Chemistry
巻: 印刷中
Chemistry - A European Journal
巻: 印刷中 号: 36 ページ: 8694-8702
10.1002/chem.201700863
Organometallics
巻: 35 号: 16 ページ: 2715-2721
10.1021/acs.organomet.6b00452
Phosphorus, Sulfur, and Silicon, and the Related Elements
巻: 191 号: 2 ページ: 159-162
10.1080/10426507.2015.1114488
巻: 21 号: 43 ページ: 15405-15411
10.1002/chem.201502166
http://www.chem-station.com/blog/2016/02/scabone.html