研究課題
特別研究員奨励費
ナノカーボン物質の半導体デバイス応用において本質となる、異種物質との複合構造体の電界下における基礎物性解明のため、中でもグラフェンナノリボンに注目し、その詳細な端構造が及ぼす影響について調査を行った。種々の端構造について電界下における物性の調査を行った結果、端構造依存の特異な外部電界遮蔽を発見した。アームチェア端においては結合交替による電子密度の偏りに起因する不均一な遮蔽が、ジグザグ端を持つナノリボンにおいてはエッジ状態由来の端に局在した電子分布によって外部電界に対する過剰な遮蔽が起こることを明らかにした。このことは、ナノリボンの詳細な端構造が電子伝導に影響を与えることを示している。原子/分子吸着・脱離により欠陥が導入されたグラフェンナノリボンの安定性の調査を行った結果、欠陥の構造が、原子/分子種、系の水素分圧に強く依存することを明らかにした。特に、原子/分子脱離による欠陥は、高水素分圧下ではアームチェア形状、低水素分圧下ではジグザグ形状が安定となることから、この結果は水素分圧による端構造制御の可能性を示唆するものである。また、六方晶窒化硼素(h-BN)に着目し、グラフェンナノリボンとの複合系の調査を行ったところ、h-BNの極性に起因してh-BNナノリボン間に生じる電位差により、間に挟まれたグラフェンナノリボンへの電界印加が能であることを確認した。さらに、h-BNナノリボンの極性が端への水素原子吸着や一軸歪みの導入によって制御でき、端に対する水素原子の被覆率、歪みの種類や大きさの調整により無極性化や極性の反転が可能であることを明らかにした。このことは、h-BNが二次元の電界源として応用可能であることを示している。以上の結果は、未解明であったナノカーボン物質の電界下での物性解明を行ったものであり、デバイス応用に向けた基礎研究として重要かつ意義深いものである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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