研究課題
特別研究員奨励費
これまで測定を行ってきたトポロジカル絶縁体試料の表面磁化については,施設の検出限界内では観測できなかった.この原因は実験を行ったPSI研究所(スイス)の測定精度が公称値よりも遥かに低く,重要な表面数ナノメートル領域を低エネルギーミュオンで見ようとすると大きなアーティファクトが生じたためである.なお,このこと自体,施設側も認識していなかった新しい発見である.本系のように生じる磁化が微小であると見積もられる場合は特に,ミュオン停止位置の詳細な解析かそれに相当する解析の手法を確立する必要がある.そのため,本年度は主にμSRを用いて研究が進められておりNMRによる相補的な検証が進められている,3次元相関のあるダイマー系NH4CuCl3について研究を進め,今後必要になるμSRスペクトルの解析方法についての知見を得た.NH4CuCl3は零磁場でギャップレスであり,磁場印加に応じてギャップが開閉することで二段階の磁化プラトーを持つ点が特徴である.我々は強磁場μSR・1H-NMRによって検証を試みた.単結晶試料を用い,TF-μSR測定についてはPSIのHAL9500において, NMRについては本研究室の超伝導マグネットを用いて,いずれも8 Tの強磁場下までの磁場範囲において測定を行い,プラトー内外の内部磁場の変化の温度・磁場依存性を調べた.NMRスペクトル測定により,結晶学的に等価だったダイマーが磁気的に非等価になっていることが明らかとなった.また,横磁化の秩序化があることも明らかになった.NMRスペクトルの解析から得られた磁気構造をもとにμSR測定の結果を解析したところ,ミュオンは陰イオンサイト近傍に停止して内場をプローブしているとして矛盾がないことが分かった.NMRとμSRを相補的に用いることにより,ミュオンの停止位置について,解析の指針が得られた.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 12件)
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