研究目的はヘミングウェイ作品の未発表原稿に基づき、削除された箇所を特定・分析し、テクストの再読・再解釈を行うというものである。 1)2016年5月のJFK図書館でのヘミングウェイの手書き原稿調査に基づき、インセスト・タブーに関する研究論文を執筆し、学術誌に掲載された。「ヘミングウェイの描く兄と妹―『最後の良き故郷』を中心に」 関西英米文学研究会『英米文学手帖』第54号 (2016年12月発行)。ヘミングウェイの遺作『最後の良き故郷』における、兄ニック・アダムスと妹リトレスのインセスト的欲望に焦点を当て、それに付随する「死の欲動」をテクストから読み解いた。 2)さらにJFK図書館での原稿調査に基づき、ヘミングウェイの描く女性表象に関する研究発表、論文投稿を行った。まず、2016年7月に国際ヘミングウェイ学会において、“Love and Death in ‘An Alpine Idyll’: A Study on the Destructed Corpse” というタイトルで研究発表を行った。国際ヘミングウェイ学会で発表した本研究に関しては、ぜひ日本のヘミングウェイ協会全国大会において、日本語で発表して欲しいという依頼があり、国際学会で発表した論考をさらに発展させた内容について、2016年11月日本ヘミングウェイ協会第27回全国大会(於い:関西学院大学)でも研究発表を行った。本論文は日本ヘミングウェイ協会『ヘミングウェイ研究』第18号に投稿後、査読審査を通過し、2017年6月に発行される予定である。タイトルは『「アルプスの牧歌」における損壊遺体の分析―言語とセクシュアリティの構築』である。 上記二本の研究論文は、ヘミングウェイ作品におけるプリミティヴィズムと性表象、人種越境願望、近親相姦、男性の陰画としての女性像という観点から分析を展開しており、博士論文の一部を構成している。
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